ブランドを定義する
ブランドというと、大企業をイメージするかもしれません。しかし、ブランディングは中小企業にこそ重要なものです。中小企業やベンチャーこそ、今からブランドを定義しましょう。
知らないでしょうけど、それはブルーじゃない。ターコイズでもラピスでもない、セルリアンよ。 プラダを着た悪魔

顧客の違い - 食べログとホットペッパー

ブランド、というと少し堅苦しく、縁がないものに聞こえるかもしれません。飲食店向けサービスを例に、ターゲットとするユーザーに選ばれることについて考えてみましょう。
例として、カカクコムの運営する「食べログ」とリクルートの運営する「ホットペッパー」を挙げます。この2つは、類似サービスでありながら、対象としている顧客も、顧客に届ける価値も、全く異なっています。
グルメ・レストランガイド
食べログ
ホットペッパーグルメ 【ネット予約可能店舗数No.1】
食べログは、CGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)型のコンテンツです。ユーザーは、お店の価格や内装を知ることができますし、その場でスマートフォンから予約することもできます。
お店を探したいユーザーがいるプラットフォーム(例:食べログ)に登録し、きちんと情報を載せておくことで、ユーザーは自分の好みに合った店舗を探すことが出ますし、たとえばインターネットから予約できる仕組みを整えれば、ユーザーにはとても便利です。
これらは、顧客にとっての価値創出、つまりマーケティング活動になります。このときの顧客のニーズは、「この場所で美味しい(雰囲気がいい、安い…etc)ものが食べたい」だからです。
ユーザーレビューという仕組みを作ることで、顧客の需要を満たしています。
また、食べログに載っているような飲食店であれば、価格よりも味を気にするようなハイエンドのユーザーがほしいはずです。
一方、競合サービスであるホットペッパーは、主にクーポンなどの割引を中心にして掲載されています。これは「できるだけお得に利用したい」という顧客の需要に合わせたものです。だからこそ、広告であっても利用されます。
このような媒体に出稿するのは、チェーンの居酒屋などが多いでしょう。つまり、味やサービスよりも割引や利便性などを重視するユーザーになるはずです。

グルーポン

ユーザーを選べなかった反面教師として挙げるのは、かつてアメリカで急成長を遂げたグルーポン(Groupon)です。
Groupon® Official Site | Online Shopping Deals and Coupons | Save Up to 70% off
Groupon
共同購入とは 多数のユーザーが時間以内に購入することで、安い金額で商品が購入できるサービス。
グルーポンは、はじめブログサービス上ででテスト版がスタートしました。彼らが提供する価値は「普通よりはるかに安い金額でクーポンを提供する」というものです。多くのユーザーの心をつかみ、短い期間で大きな成長を遂げました。
 一方、グルーポンが店舗に対して行ったのはセールスに近いものでした。「これだけのユーザーがいる。成長している。だからクーポンを出してくれ」という形で様々な企業からクーポンを募りました。しかし、ここに落とし穴がありました。
グルーポンは、お店にとっても一見価値があるように思えました。少しくらい割引しても、一度来てくれたらその後常連になってくれるかもしれません。しかし、結果的に、グルーポンで来たユーザーは、クーポンの一度きりになることもありました。
ユーザーは、できるだけ安くコースを頼みたいので、クーポンのないところには行かない。お店は店舗を体験して、常連になってほしい。
エンドユーザー(消費者)にとってよいサービスだからといって、店舗にとってそのユーザーがよい顧客であるかどうかはわからないのです。

ブランドを作る① - Facebook

ブランディングについて、わかりやすい事例を挙げます。すでにご存じの方も多いかもしれませんが、Facebookのストーリーです。今や日本だけで2,800万人のアクティブユーザーがいる巨大サービスですが、はじめに利用できたのは、創業者のマーク・ザッカーバーグと同じハーバード大学の学生のみでした。
普通、ソーシャルメディアを作ったら、できるだけ多くのユーザーに登録してほしいと思うものではないでしょうか。
しかし、ソーシャルメディアにとって一番重要なのは、つながりたい人がそのサービスに登録しているかどうか、という点であるとマーク・ザッカーバーグは考えました。
だからこそ、ニーズに沿った「エリート」のみが登録できるサービスにしたことで、正しいユーザーのみにリーチすることができたのです。
顧客選択は、1つのサービスの成否を決めるほどの重要な要素になる、ということがこの例からもわかります。

ブランドを作る② - Google

ユーザーに選ばれる、もっともわかりやすい例は採用でしょう。ここで採用とマーケティングの関係を考えることで、ブランド構築の重要性について説明します。
採用は人気の企業であればあるほど、「数」よりも「質」が重要になります。1万人の候補者が来たとしても、採用したい人間がいなければ意味がありません。Googleが実際に行った広告の例を見てください。
Googleがシリコンバレーの高速道路に出した広告看板に書かれていた文言 {first 10-digit prime found in consecutive degits of e}.com 自然対数の底”e”の中で最初に出てくる連続した10桁の素数.com
この問題を解ける人間だけが、このサイトにアクセスできる、という仕組みです。
これは、ブランディングのわかりやすい例でしょう。「私たちが必要としているのはこの問題を解ける数学的能力を持った人間だけなのだ」という強烈なメッセージを発しています(私は解けません、ちなみに)。
ブランディングとは、自社のビジネスにとって必要な顧客に対してリーチするための戦略であり、ツールであることが、おわかりいただけるのではないでしょうか。

ブランドを作る③ - Apple

顧客に「選ばれる」方法について考えるなら、Appleは最高の例でしょう。
はじめにパーソナルコンピュータという市場を切り開いたのはAppleです。しかし、その後、市場を独占し続けたのはWindowsでした。
Appleは、まさにWindowsという「帝国」と戦い続けたのです。
Windowsはナンバーワン戦略を取り続けましたが、Appleはそれとは別の軸、つまり「選ばれる」ためのオンリーワン戦略を取りました。
たとえば、CMなどの広告にもその例があります。
1983年、アップルコンピュータの取締役会は紛糾していました。広告代理店が提案してきたCMが、あまりにも強烈で個性的だったからです。結局、創業者の2人の後押しにより、このCMはスーパーボウルの間に放映されることになりました。
このCMは、灰色の服を着た人たちが、テレスクリーンに向かっているところに、ハンマーを持った陸上選手がやってきて、スクリーンを打ち壊す、というものでした(監督は、後に映画『ブレードランナー』で有名になるリドリー・スコットです)。
「1984年」と名付けられたこのCMは、大反響を巻き起こし、「Advertising Age」誌はこれを「10年で最高のコマーシャル」に選びました。
Get a macキャンペーンのCM カジュアルな格好のイケてる男性が「Mac」、少し野暮ったいスーツ姿の男性が「PC」に扮して、こんな会話を繰り広げます。 「はじめましてパソコンです」 「はじめましてマックです」 「でも、あなたもパソコンですよね」 「みんな、僕をマックと呼ぶんだよね」 「何かあなただけ特別じゃないですか、友達みたいで」
「マックはPCとは違う」というメッセージを軸に、Appleのコンピュータを使うことは、洗練されていて、カジュアルで、新しいライフスタイルを示している、と主張しているのです。
なぜオンリーワン戦略が重要なのでしょうか? もし「PCなんてなんでもいい」という顧客がほとんどの場合、顧客はどのPCを選ぶでしょう。おそらくは、一番売れている、もっとも一般的な評価の高いPCを選ぶに違いありません。
しかも、今の時代であれば、どんな製品でもレビューがインターネットで確認できます。少しでも評価のいい方、値段の安い方を選ぼうとすれば、必然的にもっとも優れた1社が勝ちやすくなってしまうのです。
ナンバーワンになれない製品や企業は、オンリーワンを目指すべく、キーメッセージを設定し、この製品はどのような点が他の製品と比べるまでもなく優れているのかを、主張していかなくてはいけません。
最終更新 3mo ago