デジタル・マーケティングとは
デジタル・マーケティングが旧来のマーケティングと違うことは、皆さんよくご承知だと思います。ポイントは、相互影響力とスピードです。

デジタルマーケティングって、一体何?

デジタル・マーケティングにはいろいろな定義はあるでしょう。
私は「インターネットを通じて顧客・潜在顧客と関わるあらゆる手段」をデジタル・マーケティングと定義しています。世の中のほぼすべての企業にとって、デジタル・マーケティングは必須であるということです。
自社でWebサイトを持たない小さなレストランでも、(勝手に)レビューサイトに掲載されているケースもあります。Google Mapに登録されていたりします。Twitterアカウントを持っていたりします。
すでに、デジタル・マーケティングをマーケティングと分離して語ることは不可能になっています。では、現代のマーケティングは、かつてのマーケティングに比べて、何が変わったのでしょうか?

相互の影響力

我々はすでに、相互に一人ひとりが影響力を持つ時代に入っています。小型デバイスを持ち、レビューをし、つぶやき、写真を上げる。
このような時代においては、口コミや相互の影響力を活かせば、従来にないヒットを生み出すことも出来ます。
ドキュメンタリー監督のジョン・ロンソンは、TEDトークでこう述べています。
ソーシャルメディアの偉大な点は、声なき弱者に声を与えたことです。でも私たちは監視社会を作りあげつつあります。そこで生き残る最も賢い方法は、声をあげないことなんです
私たちは一方通行にメッセージを押しつけるのではなく、相互的に影響力を持った時代に生きているのです。大きなパラダイムシフトが起きたことを認めなくてはいけません。
ありとあらゆる企業活動は相互的になり、レビューされ、つぶやかれ、写真に取られ、シェアされるようになりました。1つの不用意な発言が企業のリスクになり、意図せず世界中で有名になれる可能性もあります。
誰もが15分間なら有名人になれる。いずれそんな時代が来るだろう。 In the future everyone will be world-famous for 15 minutes. アンディ・ウォーホール
20世紀は企業主導の社会でしたが、現代は顧客主導の社会と言ってもよいでしょう。この時代を読み解く1つの鍵は、マーケティングの大家であるフィリップ・コトラーが提唱した、「F-factor」にあります。
F-Factor
    Family(家族)
    Friend(友達)
    Follower(フォロワー)
    Fans(ファン)
F-factorは、上記の4つをまとめた造語です。ソーシャルメディア時代において、影響力を及ぼしうる様々な要素についてまとめられ、提唱されたものです。 コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則
このF-Factorが、私たちの意思決定に強い影響力を及ぼしていることがわかってきています。作られた評価ではなく、口コミがさらに重要になっているのです。
顧客や消費者の声がすぐに届くということは、すぐに改善できるポイントが見つかるようになったということでもあります。
顧客や消費者が大きな力を持ったこと、そしてそれらが相互的に、企業にも影響を及ぼす用になったこと。これはデジタル・マーケティングにおける大きな特徴の1つです。

パーソナライゼーションとターゲティング

もう1つのデジタル・マーケティングによる大きな変化を挙げましょう。パーソナライゼーションです。
パーソナライゼーション
ユーザーの行動履歴、閲覧履歴などを元に、コンテンツを最適化する技術です。 たとえば、Google検索はユーザーの検索履歴を元にパーソナライズされ、Amazonのおすすめ商品は、ユーザーの購入履歴を元にパーソナライズされています。
更に、ターゲティングも。屋外広告、テレビ・ラジオCM、新聞・雑誌広告などは、せいぜいその読者の属性を選んで、出稿する媒体を選ぶことができる程度でした。
しかし、デジタルにおいては、ターゲティングの精度を考えられないほど細かく設定することも可能です。
ターゲティング
顧客を狙って広告やコンテンツなどを打つことです。デモグラフィック(ユーザーの属性)ターゲティングや地域ターゲティングなど、様々な種類があります。
年齢や性別だけではなく、住んでいる地区単位、学歴、趣味嗜好までで細かく設定したり、最近訪れたサイト、最近検索されたワード、最近出したメール(Gmail上の広告などは、メール内容に合わせて広告が変化します)などからターゲットを絞り込むことが可能になっています。
パーソナライゼーションは、あらゆるサービスに組み込まれ、大きな影響力を持つようになりました。この影響を「フィルター・バブル」と称したのが、「閉じこもるインターネット」の著者であるイーライ・パリサーです。
閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
Amazon.co.jp
なぜこれほどターゲティングが細かくなったのでしょう? あまりにも多くの無関係な広告がインターネット上に溢れていることも1つの要因です。
Marketing Diveの調査によれば、顧客の71%はパーソナライズされた広告を好んでいます。その最大の理由は「無関係な広告を減らすのに役立つ(46%)」というものでした。
人々は無関係な人に向けた無関係なメッセージを見たくはないのです。
全てのメッセージは、より個人的なものになり「あなただけに」という形を取って現れます。テレビCMが最大公約数的なプロモーションを目指したのとは正反対の進化が、デジタルの世界では起きています。

スピードの速さ

もう1つ、デジタル時代の大きな特徴を挙げましょう。スピードです。たとえば、新しいテレビCMを流すには、何カ月もの期間が必要です(少なくとも、1日2日で終わることはないでしょう)。新聞広告も、数週間は必要でしょう。
しかし、デジタルであれば、事情は全く違います。一瞬にして顧客のフィードバックが得られるからです。
1時間だけ広告を試してみて、上手くいかないから広告の文章を変える、あるいはブログの記事を変更するということももちろん可能です。
よいことばかりではありません。このサイクルの速さは、マーケティング担当者の過重労働をもたらしてます。
実際に、イギリスのデジタル・マーケティング担当者は平均で毎週8時間余分に働いており、約半数(46%)が過労を感じ、約3分の1(30%)が、充分な給料をもらっていないと感じています。
日本企業はとりわけ、マーケティング担当の人数が充分でない企業が多くあります。そのしわ寄せは、担当者、あるいは代理店の担当者に行くことになります。
実際に、代理店の若い社員の方が、過労などを理由にして亡くなったという悲惨な事件も起こっています。
デジタル・マーケティングには、新しい時間サイクルが存在することを認めた上で、それに対応できる人的リソースを確保することが、現代の企業には求められています。

デジタル・マーケティングの特徴④ - 数値化

かつて、「百貨店王」と呼ばれた偉大なマーケターである、ジョン・ワナメーカーは、かつて「広告費の半分は無駄だ。問題は、それがどちらの半分かわからないということだ」と言いました。この言葉はよく知られています。
有史以来、広告はこのような欠陥を抱えていました。テレビ広告にせよ、屋外広告にせよ、その成果を検証することは簡単ではありません。
しかし、インターネット上では、様々な効果検証が可能になります。全てを効果検証できているわけではありませんが、旧来の広告に比べれば大量です。これは、デジタル・マーケティングが起こしたもっとも大きなブレークスルーの1つです。
デジタルマーケターは、マスマーケティングの分野からは「数値を見ているだけで戦略がない」と揶揄されることもありますが、実際には、より多くの数値を確認しながら、戦略的な視野を持つができます。

マーケティング3.0 - よりよい世界を作るために

世界でもっとも有名なマーケターの1人であるフィリップ・コトラーは、ソーシャルメディアの時代に際し、「マーケティング3.0」という概念を提唱しています(図1-1)。
コンセプト
時代の特徴
年代
マーケティング1.0
製品中心
大量生産・大量消費
1950〜60年代
マーケティング2.0
消費者中心
価値の多様化
1970〜1990年代
マーケティング3.0
人間中心
ヴィジョン主導
2000年代〜
マーケティング4.0
自己実現
共創の時代
2010年代〜
コトラーは著書『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』(朝日新聞出版)で、このように書いています。
現在、われわれはマーケティング3.0、すなわち価値主導の段階の登場を目の当たりにしている。マーケティング3.0では、マーケターは人びとを単に消費者とみなすのではなく、マインドとハートと精神を持つ全人的存在ととらえて彼らに働きかける。 消費者はグローバル化した世界をよりよい場所にしたいという思いから、自分たちの不安に対するソリューション(解決策)を求めるようになっている。 混乱に満ちた世界において、自分たちの一番深いところにある欲求、社会的・経済的・環境的公正さに対する欲求に、ミッションやビジョンや価値で対応しようとしている企業を探している。選択する製品やサービスに、機能的・感情的充足だけでなく精神の充足をも求めている。
デジタルの世界においては、相互の影響力が非常に強く働きます。だからこそ、デジタル・マーケティングは、旧来のマーケティングに比べ、より深い価値観に触れるものでなくてはいけません。

ステップ・アップ

デジタルマーケティングを学ぶのにいくつか良い方法があります。例えば、Googleが公式で提供している「デジタル・ワークショップ」は、非常に良いコンテンツの一つです。
オンライン マーケティングを学びましょう - Google 提供の無料トレーニング コース
書籍の中では、牧田幸裕さんが書かれた「デジタルマーケティングの教科書」がわかりやすく、おすすめです。
デジタルマーケティングの教科書
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最終更新 1mo ago