Reach(顧客に届ける)
はじめに、顧客に届けることについて考えます。顧客に届ける。有史以来、広告業とはこのために存在しました。誰にも知られていない商品を売ることはできないからです。いったいどのようにして商品を顧客の前に表示することができるでしょうか。

情報過多の時代

1938年、アメリカの人々が恐れおののく事件がありました。ラジオから火星人が攻めてくるニュースが流れてきたのです。その迫真の内容に人々は驚き、暴動を起こした(……という説もあれば、そこまでではなかったという説もありますが)と言われています。
実際には、もちろん火星人は攻めていません。これはH・G・ウエルズの『火星戦争』というラジオドラマでした。
この話の真偽はさておき、現代でこれと同じことが起きたとして、何が起こるでしょうか? ラジオはその時最先端のメディアでしたが、テレビ、Twitter、YouTube、様々なメディアの乱立する現代においては、これほど1つの番組に、人々が影響されるということはないのではないでしょうか。
人間はそれほど進歩していませんが、情報量は飛躍的に増加しています。
総務省が平成21年に「情報流通インデックス」という指標を作成し、人間が消費可能な情報量に対して、流通している情報は圧倒的に増えている、ということを明らかにしています。
もっとも増加しているのは、もちろんインターネットです。デジタルにおいて、情報洪水の中で顧客にリーチするのは、それほど簡単なことではありません。

トリプルメディア戦略

デジタル・マーケティングにおいて顧客にリーチする手段を分類する場合、一般に「トリプルメディア」という概念が利用されます。トリプルメディア戦略とは、以下の3つのメディアを組み合わせた戦略です。
オウンドメディア(Owned Media)
ブログやメディアサイトなど、自社で「保有(Owned)」しているメディアです。引用されたり、SNSで拡散されたり、検索されることによって流入し、自社のトラフィック数を増やします。
ペイドメディア(Paid Media)
ペイドメディアは、広告やPR記事など、お金を払って利用するメディアです。
アーンドメディア(Earned Media)
アーンドメディアは、ブログや他社メディアの記事など、自社でコントロールできない、「獲得した」メディア露出です。
通常、これらの3つに「シェアドメディア(ソーシャルメディア)」を加えたものが、トリプル+1などと呼ばれ、利用されています。重要なことは、どのような流れで顧客にリーチするか、ということをプロットし、自社でアクセス可能な資産がどこにあるかを常に考えておくことです。
一般的にデジタル・マーケティングを使って顧客にリーチする場合、コンテンツを作り検索流入を狙う、SNSなどの拡散やバズを狙う、広告を使ってリーチする、などの手法が考えられます。

トラフィックを分けてみる

世界で最も使われる分析ツール、Google Analyticsが定義する集客には、このような種類があります。
図3-5 集客の種類 作図してください
ノーリファラー(ダイレクト)
ブックマークやお気に入りなどからの流入、直接URLを叩いてのトラフィック、アプリからの流入など、正確に参照元がわからないトラフィック
自然検索
有料ではない検索(Google、Yahoo!、Bingなど)
有料検索
お金を払った検索(AdWordsなど)
ディスプレイ広告
検索以外の広告からの流入
参照(リファラー)
他のサイトにリンクされたURLからクリックして流入したトラフィック
ソーシャル
Twitter、FacebookなどのSNSからの流入
メール
EメールのURLをクリックしての流入

トラフィック・ポートフォリオを作る

トラフィックには種類がありますが、このトラフィックの種類によっても様々な性質があります。
長期的に獲得できるトラフィックと、短期で上昇するトラフィックを組み合わせることで、ポートフォリオを組んでみましょう。
検索トラフィック
安定してトラフィックが獲得できる流入ソースです。
とりわけ、大きなキーワード(ビッグキーワード)で上位を獲得できている場合、大きなトラフィックが安定して入ってきます。
参照トラフィック
他サイトに張られたリンクからの獲得トラフィックです。大きなサイトであれば比較的安定しているものの、ニュースサイトなどであれば、そのニュース自体の鮮度が落ちた場合トラフィックがほとんどなくなってしまうという欠点があります。
ソーシャルトラフィック・Eメールトラフィック
ソーシャルメディアのトラフィックは、2種類あります。
TwitterやFacebook、はてなブックマークなどで大きく拡散されれば、普段全くトラフィックのないサイトでも非常に多くのトラフィックを獲得できる可能性があります。
一方、ソーシャルメディアのフォロワーや購読者、あるいはメールマガジンの購読者を増やすことができれば、定期的に安定したトラフィックを獲得できるでしょう。
広告トラフィック
ソーシャルのトラフィックは、2種類あります。爆発的に増加する可能性がある拡散のトラフィックと、フォロワーや購読者などとつながることで定期的にアクセスを増加させることができる安定的なトラフィックです。
TwitterやFacebook、はてなブックマークなどで大きく拡散されれば、普段全くトラフィックのないサイトでも非常に多くのトラフィックを獲得できる可能性があります。

トラフィックの種類を確認しよう

今の自社サイトは、どのような状況になっているでしょうか? 以下は、どのような種類のトラフィックが多いのかによって変わる例です(あくまで一例です)。
①ノーリファラーが多い
いろいろなケースが考えられます。まだ立ち上がりの段階で、内部からのトラフィックが多い可能性もありますし、サーバー側のリダイレクトなどでリファラーが抜け落ちるなど、何らかの異常があるケースも考えられます。
また、アプリからのアクセスも正確に取れないことが多いため、ノーリファラーが高まるケースもあります。
②検索トラフィックが多い(ブランドキーワード)
ブランドキーワードがほとんどであるケース。これは、商品などの知名度はある程度あるものの、サイト上のコンテンツが少ないのかもしれません。
③検索トラフィックが多い(ブランドキーワード以外)
これは、商品やサービスの認知度は低いものの、その他の記事などで一定の流入が取れているケースです。認知度が低い場合、よりユーザーの記憶に残すことが重要です。
④広告が多い
広告に流入の大半を依存している場合、リピート率がどの程度あるかによって健全性は変わります。広告で獲得したユーザーの中で、一定程度リピートできている場合や、もちろん売上などで獲得できている場合は問題ありませんが、ほとんどリピート率がない場合、認知獲得にも寄与していないと言えるでしょう。
⑤リファラー(外部リンクからの流入)・ソーシャル流入が多い
リファラーが多い場合、すでに外部リンクからの流入を獲得できているため、検索流入が向上するポテンシャルが充分あります。
また、ソーシャル流入が多いケースは、一時的に記事などが拡散しており、長期的な流入にはつながっていないケースもあるので、注意が必要です。
最後に、各種有名サイトのトラフィックソース(ある期間を抜粋)を確認してみましょう。SimilarWebで調べてみます。

Yahoo! Japan(yahoo.co.jp)のトラフィックソース

ダイレクトのトラフィックが非常に多いです。検索が少ないのも特徴です。Yahoo!のURLはブラウザのホームページにしていたり、ブックマークしている方が多いのでしょう。

クックパッド(cookpad.com)のトラフィックソース

非常に検索流入が多いサイトであることがわかります。
競合の楽天レシピ(recipe.rakuten.co.jp)は、検索が67%でした。それを踏まえると、75%という数値はかなり多いと考えられるでしょう。

楽天(rakuten.co.jp)のトラフィックソース

検索からリファラル、ダイレクトまで、非常にバランスのよい構成です。
競合のAmazon(amazon.co.jp)も同じようなトラフィック構成になっていますが、楽天はメールが5%(Amazonは1%程度)あるということが特徴でしょうか。

朝日新聞(asahi.com)のトラフィックソース

ニュースサイトとしては珍しく、検索流入よりもダイレクト流入が多い構成になっています(競合の産経新聞は40%程度が検索)。有料会員が一定程度、定期的にアクセスしているということでしょうか。
また、ソーシャルで一定程度流入していることも見逃せません。
競合のサイトなどがあれば、トラフィックソースをきちんと確認することをおすすめします。どのように流入を確保するか?は事前に考えておくべきです。
最終更新 19d ago