Closing(締結する)
クロージングとは、最終的に購入ボタンや会員登録ボタンを押させることです。どれほど覚えられていても、最終的に購入ボタンを押すまでにはまだ遠い道のりがあります。実際にコンバージョン・売上を上げるためには、どのような手法が必要なのでしょうか?

コンバージョンしない理由は?

シアトルの起業家、Jayson DeMersによると、ユーザーがコンバージョンしない(売れない、登録されない、etc…)理由は5つあります。
①ユーザーがコンバージョンする機会を得られていない
たとえば、商品を買いたいのにお問い合わせフォームしかなかったり、インターネットでは予約ができず、電話しなければいけないシステムになっていたりしませんか?
ネット上できちんと完結するようにシステムを変えられれば、コンバージョンが増える可能性があります。
全てのページから適切にコンバージョンできるように導線が貼ってあるでしょうか?
②ユーザーが迷っている
たとえば、クリックさせたいボタンが小さかったり、見づらかったりするのではないでしょうか? ユーザーを迷わせるようなデザインになっているのか考えてみましょう。ユーザーが購入しようと思ったときに、ちゃんとたどり着けているでしょうか?
サイトの直帰率が多い場合、この理由が大きい可能性があります。
③ユーザーの気が散っている
あなたのページには、あまりにも多くの要素があるのではないでしょうか? ユーザーの気が散るような画像や動画、エフェクトなどを減らせば、ユーザーはあなたの商品を買うことに集中できるかもしれません。
ユーザーが必要な行動だけに集中できるよう、要素を減らしてみましょう。
Googleのトップページには、Yahoo!のようなバナーやいろいろなページへのリンクがあったわけではありません。シンプルに、検索のためのボックスがあるだけです。
④価値が充分でない
残念ながら、このケースが一番多いかもしれません。そもそも商品自体にあまり価値がなければコンバージョンすることもないでしょう。
とはいえ、これはどうしようもないので、一旦置いておきましょう。
⑤正しいターゲティングをしていない
たとえば、富裕層向けのサービスなのに、全体に広告を出している、女性向けのサービスなのに男性もホームページを見ている、など、正しくないターゲティングをしている可能性はありませんか?
Google Analyticsで、どのようなユーザーが来ているのか確かめてみましょう。
コンバージョンしない場合、これらの要素を組み合わせて考えてみましょう。実際にユーザーにヒアリングしてみるのもよいかもしれません。

買う理由と買わない理由

一般的に、クロージングする場合、買う理由(需要)を作ることと買わない理由(抵抗)をなくすこと、両面が重要です。
これは、たとえば車をイメージするといいでしょう。買う理由があるということは、エンジンがかかっているようなものです。これがなければユーザーは動きません。逆に、買わない理由がある場合、ブレーキがかかっているようなものです(図3-18)。
クロージングを行う場合、買う理由をしっかりと提示することと、買わない理由についてユーザーを安心させること、両方を行う必要があります。
ここでは顧客をクロージングし、コンバージョンを増やすための4つの方法をご提案します。

クロージング① - 顧客を安心させる

はじめに、顧客を安心させなくてはいけません。ユーザーは残念ながら、企業に対して強い不信感を覚えています。それは当然かもしれません。広告にせよ、口コミにせよ、あまりに嘘と誇大表現が多いからです。
韓国で行われた研究によると、オンラインのユーザーレビューは「重大な」影響を売上に及ぼしており、その中でもとりわけ、個人ブログなどのレビューは、製品の販売から一定期間は非常に大きな影響力を持つということです。
とりわけ、ユーザーレビューの場合、平均評価などの要約と、もっとも高い評価のレビューを詳しく参考にします。平均評価が低ければ、見向きもされなくなる、ということです。
もし、全ての顧客がレビューを参考に選んでしまえば、売上を上げられる商品はジャンルごとに極めて限られたものになるでしょう。
Business.comの調査によれば、消費者の77%はレビューを重要だと考えており、全く読まないと応えたのは1%だけでした。99%の人は、オンラインでモノを買うときにレビューを少なからず気にしている、ということです。
これがあまりに大きなインパクトをもたらすため、いわゆる「ステマ(ステルス・マーケティング)」騒動が起きてしまったことは記憶に新しいところです。
ステルス・マーケティング
実際には金銭を受け取っているにもかかわらず、あたかも顧客が自発的に受けたレビューであるかのような形で投稿された口コミ、またそれを利用したマーケティング手法。
もちろん、正当な手段でレビューを獲得する方法はあります。アプリであればレビューを適切なタイミングで促したり、飲食店であれば「レビューを書けば1品サービス」などのサービスを提供するという手法もあるでしょう。
Amazonや食べログなどがない場合でも、たとえば自分のホームページに「ユーザーの声・顧客の声」などのページを載せるという手法は、よく使われています。
重要なことは、顧客が企業発信の情報に対して疑いの目を向けていて、実際に使っている人の声を聞きたがっているということです。

クロージング② - 選択肢を絞る

コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授による、興味深い研究があります。「ジャム実験」として有名なこの実験は、アメリカの高級スーパーで行われました。
選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)
Amazon.co.jp
イチゴジャムを6種類並べた場合と、24種類並べた場合、どちらのほうが売上が高かったでしょうか? 驚くべきことに、6種類のほうが、24種類よりも10倍も売上が高かったのです。
実際、誰しも考えるには脳のリソースを使います。可能な限り顧客の負荷を減らす(認知負荷と呼ばれます)ことが重要なのです。
事業を行う側からすると、ついつい、多くの選択肢を提示したくなりますが、思い切って選択肢を絞ってしまえばどうでしょうか? 売上や会員登録率が向上するかもしれません。
この知識を応用すれば、よりよい選択を促すことができます。コロンビア大学の教授、エリック・ジョンソンの研究によると、2003年時点での臓器移植の同意率は、ドイツが12%、オーストリアが99%でした。この差はいったいどこから出てきたのでしょうか?
答えは、デフォルトの選択肢がどちらであるのか、という点にありました。ドイツは、選択的に臓器移植を選んだ人のみが同意したと定義されていた(オプト・イン)のに対し、オーストリアは、選択的に臓器移植に反対する人以外は臓器移植に同意したとみなしていた(オプト・アウト)のです。
脳に負荷をかけないようにするだけで、臓器移植のドナーを劇的に増やすことができたのです。

クロージング③ - 意思決定を簡単にする

1人の客が家電量販店にやってきます。お目当ては冷蔵庫。実際に開けたり閉めたり、感触を確かめて、店員からも情報を聞き出します。
店員がセールストークをしようと近づきますが、彼女は優雅にそれを断ります。そして、スマートフォンを手に取り、その場でECサイトから購入してしまったのです。
これは「ショールーミング」と呼ばれる行動で、数年前から家電量販店などでよく見られるようになった光景です。
ショールーミング
Wikipedia
実際、イギリスの調査では、消費者の44%が、オンラインで商品を探している間に、物理的な店舗を訪れています。
アメリカの調査でも、60%以上のユーザーが、店頭で実際に商品を購入する際に、価格や商品情報などを確認しています。
顧客は、なぜわざわざ店頭に足を運ぶのでしょうか? それは、重さや大きさ、実際のイメージなど、ネットだけで確認できないものを確認するためです。顧客は、選ぶために来ているわけではありません。あくまで確認をしに来ているのです。
デロイトの調査によると、デジタル上での行動は、実店舗における収益の56%に影響を及ぼしているそうです。
ここからわかるとおり、多くの業種にとって、デジタル上で完結しないことのデメリットは日々大きくなっています。
飲食店など、今まではデジタル上で決済や予約ができなかった業種でも、可能な限りデジタルで完結させることが、今後はより重要になっていきます。
もちろん、インターネットで完結しただけでは充分ではありません。Eコマース(通販)サイトの顧客が、カートに商品を入れたまま購入してしまう離脱してしまう「かご落ち」の割合は、69.23%にも達しています。一度買ってもいいかな、と思ったものがあるにもかかわらず、10人のうち7人近くが離脱してしまうのです。
この問題に早くから取り組んだのはAmazonです。1997年にAmazonに入社したプログラマー、ペリ・ハートマンは、「可能な限り簡単にユーザーが注文できるシステムを作れ」というCEOジェフ・ベゾスのリクエストを受けて、頭を悩ませていました。
何といっても、相手は稀代の起業家であり、ワンマンで知られる経営者です。なんとしてもこのリクエストは、実現させなくてはいけません。
こうして彼が最終的に作り上げたのが、Amazonのワンクリック購入システムです。このシステムのおかげで、ユーザーは、クレジットカード情報を事前に入力することで、ほしいものがあればワンクリックで購入できます。なんと特許まで取得しています(2017年に失効)。
これは、大きな利益率の上昇をAmazonにもたらしました。重要なことは、Amazonは何ひとつ流入を増やすことなく、売上を伸ばすことができた、ということです。
彼らは広告の量を増やしたわけではありません。ただ、今まで何クリックもかかっていた購入プロセスを、ワンクリックに短縮しただけです。そのことが、大きな利益を生むことになったのです。

クロージング④ - 段階を踏ませる

「フリーミアム」という概念は、すでに一般的なものになりましたが、今では多くのサービスが「初回無料」や、「無料版と有料版が存在する」といったフリーミアムモデルを採用しています。
Amazonでクリス・ アンダーソン, 高橋 則明, 小林 弘人のフリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略。アマゾンならポイント還元本が多数。一度購入いただいた電子書籍は、KindleおよびFire端末、スマートフォンやタブレットなど、様々な端末でもお楽しみいただけます。
Amazon.co.jp
スマートフォンのゲームも多くは初回無料、Netflixも初月なら無料で見放題です。
もしGoogleで1回検索するたびに10円を払っていたら、YouTubeでビデオを再生するたびに100円を払っていたら、私たちが払う金額は莫大になる(もしくはスマートフォンを捨てて図書館に再びこもるようになる)でしょう。
実際、インターネットがこれほど普及するまで、無料を前提としたビジネスモデルというのは多くの企業にとっては想像の外にありました。
しかしながら、私たちもこの初回無料の力を活かさない手はありません。無料ユーザーに提供できるものはないでしょうか?
なにせ、日本は100円のドーナツ1個の無料で大行列ができるほどの国です。
B2Bの事業であれば、いきなり商談に行くのではなく、メールアドレスを入力してもらい、顧客にとって役に立つ資料を提供するという手もあります。
まずはメールマガジンに登録してもらうという方法もあるでしょう。
このように、顧客に段階を踏んでアプローチする手法は「ナーチャリング(顧客育成)」と呼ばれています。
あらゆる事業において、段階を踏ませることの効果は過小評価できません。とりわけ、金額が大きな事業であればあるほど、いきなり意思決定するということは考えづらいからです。今あるコンバージョンポイント(電話番号、メールフォーム、ユーザー登録…etc)の前に、もう1つ前のコンバージョンを置くことはできないでしょうか?
もう一度考えてみるとよいかもしれません。
最終更新 19d ago