A/Bテストとカイゼン

データ民主主義の時代

デジタル・マーケティングにおいては、ボトムアップの組織にすることが重要です。そして、そのために必要なのがデータであり、データ分析です。
世界でもっとも有名なA/Bテストツールの1つである、Optimizelyの創業者であるダン・シロカーは、これを「データ民主主義」と呼んでいます。
シロカーはもともと、バラク・オバマが大統領になった2009年の大統領選でインターネットの広報を担当していました。
このときのA/Bテストの事例は、Optimizelyの公式ブログで詳しく語られています。そのうちの1つとして、シロカーはより多くの政治献金を獲得するためにあるテストを行いました。
ボタンの中でもっともコンバージョンレートが高かったのは、どれだと思いますか?
正解は、2つめの「LEARN MORE(詳細はこちら)」でした。他の画像との組み合わせも調整した結果、ある特定の組み合わせは11.6%のサインアップ率を記録し、元のWebサイトの8.6%と比べて、40.6%も上昇していました。
Amazonの事例を見てみましょう。WIREDの記事によると、Amazonの元エンジニア、グレッグ・リンデンは、「衝動買い」の機能を作ったものの、社内で相手にされなかったそうです。
これに憤慨したリンデンは、A/Bテストを実施しました。すると、結果はクリアで、この機能の導入は明らかにAmazonの収益を向上させるものであったということです。
これは、データ民主主義の好例ではないでしょうか? たった1人の開発者が行った結果が、あらゆる上司のマネジメントを不要にしてしまう可能性があるのです。

勘はあてにならない? テストしよう!

先ほど紹介したダン・シロカーは、オバマ大統領の選挙戦での印象深いこととして、以下の例を挙げています。
スタッフ全員が気に入っていたキャンペーン動画を(何といっても、政治家の演説ですから)、画像と比較するためにテストしてみたところ、他のどの画像よりも結果が悪かった、というのです。
自分たちの直感に反する結果を受け入れ、とにかくテストするという文化を作り上げたチーム・オバマは、大統領選挙で6億4,000万ドルもの献金(その多くが小口献金)を集めました。
私たちの直感がいかにあてにならないものなのかは、様々な実験によりすでに実証されています。
たとえば、心理学者ダニエル・カーネマンは著書『ファスト&スロー』で、以下のような例を挙げています。
近所の人がスティーブのことを次のように描写しました。「スティーブはとても内気で引っ込み思案だ。いつも頼りにはなるが、基本的に他人には関心がなく、現実の世界にも興味が無いらしい。物静かでやさしく、秩序や整理整頓を好み、こまかいことにこだわる」。さて、スティーブは図書館司書でしょうか、それとも農家の人でしょうか? ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?
もちろん、多くの人にとって容易に導き出される結論は、「図書館司書」でしょう。彼に関する特徴の全ては図書館司書であることを示しています。
しかし、この文章は、もう1つの重要な統計的事実を無視しています。アメリカにおいて、図書館司書は農家従事者の20分の1しかいないのです。つまり、スティーブがいかに内気で引っ込み思案であろうと、彼が図書館司書である可能性よりも、はるかに農家である確率のほうが高いはずなのです。
このように、私たちは一見重要そうな物事に飛びついてしまい、それが本質的に重要であるかについては思いをめぐらさないことが多くあります。
ましてや、マーケティングの世界において私たちは驚くほど顧客のことを知らない(そして顧客自身も自分のことを理解しているわけではない)のです。
マーケティングを行うためにはボトムアップのチームを作り、まず試してみる、という文化を作ることが重要であることがおわかりいただけるのはないでしょうか。
最終更新 3mo ago