デジタル広告の歴史
バナー広告は、もっとも歴史が古く、おそらくもっともなじみの深い広告でしょう(もしあなたが広告ブロッカーを導入していなければ)。そして、たぶんもっとも嫌われる広告でもあります。どのようにすれば、このやっかいな広告手法を活用できるでしょうか?

バナー広告・ディスプレイ広告の誕生

スマートフォンを操作しているとき、うろうろして邪魔なバナー広告に遭遇したことはあるでしょうか? 答えは、おそらくイエスでしょう。
バナー広告は、あまり好かれている広告とは言えません。平均すると、CTR(クリック率)はたったの0.05%です。
CTR(クリック率)とは
クリック数 ÷ インプレッション = CTR
たとえば、広告が100回表示されて1回クリックされていれば、CTRは1%です。
このような状況は広告ブロッカーの利用を促進しています。広告ブロッカーに無効化する広告を配信するパブリッシャーであるPageFairの調査によれば、何らかの広告ブロッカーの利用率は30%にものぼっています。
少し時代をさかのぼります。下のものは、1994年に初めて、AT&Tがhotwired.com(現在のWIRED)に設置した、「世界ではじめてのバナー広告」は、見た人の中の44%もの人が実際にクリックしたと言われます。
バナー広告はその後、すさまじい速度でインターネットの世界を席巻していくことになりますが、現在では人々はそれにうんざりしています。とりわけ、スマートフォンにおいては、ますます鬱陶しいものへと変質しているようです。

スマホ広告は誤クリックばかり?

PC上でのディスプレイ広告は、まだしも行儀がいいといえるかもしれません。スマートフォン上では、とにかくいかにユーザーに間違えてクリックさせるか?ということに情熱が傾けられているため、誤クリックが多くなっています。
ITmediaの調査によると、スマートフォン上での62.8%のクリックは、ユーザーが意図しないクリックであることがわかっています。

アドフラウドとデータの重要性

もう1つ、今の大きな問題として、アドフラウドと呼ばれる現象があります。これは、広告が表示された、クリックされたとカウントされているにもかかわらず、実際にはbot(ロボット)が見ているだけ、という現象です。
アメリカのテック企業、pixalateの調査によると、2017年のQ1(1月~4月)において、日本のデスクトップの81%、モバイルの約10%がbotによるものだった、約10%のインプレッションと、動画の20%の視聴がbotによるものだった、と結論付けられています。広告業界全体での損失は数千億円規模にのぼるとの試算もあります。
ディスプレイ広告が疑問視されているのは、このような理由もあるのです。
では、どのように活用すればよいのでしょうか?

Yahoo!と純広告

1995年、インターネットの歴史を変える1つのWebサイトが、スタンフォード大学の片隅でひっそりとオープンしました。
インターネットの巨大ポータルサイト、Yahoo!の誕生です。
Yahoo! とは ジェリー・ヤン、デヴット・ファイロが創業した、ポータルサイトの草分けです。様々な事業を有し、月間ユニークビジターはおよそ1億(2016年)あります。
Yahoo!はまさに、インターネットにおける「ポータル(玄関)」でした。今ほど検索エンジンが発達していなかった時代、お目当てのWebサイトに向かうためには、Yahoo!を経由する他ありませんでした。
だからこそ、Webサイトは競ってYahoo!のディレクトリに登録されることを目指したのです。
ユーザーにとって価値があるサイトでなければ、Yahoo!は掲載を許可しません。つまり、あらゆるWebサイトは、ユーザー価値の探求(あるいは、Yahoo!の担当者のお眼鏡にかないそうなコンテンツの探求)をはじめることになったのです。
これは、インターネットにおけるはじめての価値創造的なマーケティング事例だったと言えるでしょう。現代のコンテンツマーケティングやSEOにつながる流れは、このときすでにはじまっていたのです。

Yahoo!の犯した間違い

ある時期まで、Yahoo!は現在におけるGoogleとFacebookを合わせたほどの影響力を持っていました。ほとんど全てのインターネットユーザーが利用していたのですから。
Yahoo!が犯してしまった致命的な失敗の1つは、検索エンジンの重要性を軽視し、自社の検索エンジンに、後の競合であるGoogleを使用してしまったことです。
シェアを奪い続けたGoogleに対抗しようと、AltavistaやInktomiなど、当時主要だった検索エンジンを次々に買収し、Yahoo Search Technologyとして統合、自社検索エンジンに切り替えましたが、ときはすでに遅く、技術力に大きな差がついていました。
Y Combinatorの創業者で、Yahoo!の元従業員であるPaul Grahamによると、彼は90年代後半に、Googleを買収するべきだと、創業者にアドバイスしたそうです。
彼はブログでこう語っています。「1998年後半か、1999年はじめに、David FiloにGoogleを買うべきだと言ったはずです。私も、他のほとんどのプログラマーも、GoogleをYahoo!検索の代わりに使っていましたから」
What Happened to Yahoo
それに対して、Yahoo!創業者のDavid Filoはこう答えたそうです。
検索は我々のトラフィックのたった6%だ。そして、我々は月に10%ずつ成長している。そんなこと、心配する必要はないよ
結果的には、この判断が命取りとなりました。

Yahoo! Japanとブランドパネル

Yahoo!はバナー広告の取り扱いをはじめます。トラフィックが充分にあれば、インターネット上でも広告モデルが成立すると見抜いたのです。
1996年には、Yahoo!の日本版であるYahoo! Japanがバナー広告の取り扱いをはじめました。これは、今も続く人気の広告商品になっています。
Yahoo! Japanには様々な広告商品がありますが、2017年の媒体資料によればもっとも高額なトップページの広告(Yahoo! JAPANトップインパクト)は、1週間の出稿金額が4,400~4,800万円となっています。
代表的な媒体の広告は、図7-3のような金額になります(それぞれ、2017年の媒体資料に基づきます)。

広告の代表例と金額

媒体名
商品名
期間
金額
Yahoo! Japan
ブランドパネル トリプルサイズ
1週間
500万円~
クックパッド
レシピコンテスト
4週間
550万円
Naverまとめ
スポンサードまとめ プレミアム
2週間
400万円
日経電子版
フロントページオーナーシップ
7:00~14:00
500万円
純広告は、大手のメディアや、専門性の高いメディアなどが中心です。
しかし、インターネットが普及し、小さなWebサイトがあちこちにできると、彼らも枠を売りたいという需要が出てきます。しかし、小さなWebサイトがいちいち独自の広告を出していては、広告を出すほうも手間ですし、サイト側も顧客が見つかりません。
そこで、アドネットワークという仕組みができました。これは、業者が無数の小さなWebサイトを収集し、一括で販売を請け負うという仕組みです。
広告の種類
純広告
大手のサイトが直接売買している広告枠
アドネットワーク
Webサイトが設置し、専門の企業がまとめて売買している広告枠
Webサイトの出稿可能な広告枠のことを、俗に「在庫」と呼びます。アドネットワークであれば、在庫がなくなることはほとんどありません。規模を大きくすることで、需給のギャップをなくすことができます。

DSPとSSP

アドネットワークを利用する場合、様々なテクノロジーが使われます。
誤解されがちなのが、DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)とSSP(サプライ・サイド・プラットフォーム)の違いです。
とはいえ、この業界はやたらと3文字の英単語が多いもの。こんがらがりますよね。
DSPは広告主側のテクノロジー(効果の高い枠に安く出すことを目的とする)であり、SSPはWebサイト(媒体)側のテクノロジーであるということを覚えておけば大丈夫です。
Google Display Networkのように、SSP側の機能とDSP側の機能を兼ねているプラットフォームも存在しますし、Criteoのように自社で在庫は持たずにテクノロジーに最適化しているプラットフォームも存在します。
特筆すべきは、これら複数の技術を合わせた複雑なやりとりをわずか0.1秒程度で行っているということです。これらの買い付けとオークションのことをRTB(リアル・タイム・ビッティング)と呼びます。
DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)とは
広告主の要求に合わせて、在庫の買い付けを行うプラットフォーム。複数のSSPに接続して、広告主側のオーディエンスデータなどに合わせて広告主が買い付ける(ビッティング)べきかどうかを判断します。
SSP(サプライ・サイド・プラットフォーム)とは
簡単に言えば、Webサイトの枠を大量に保有し、収益を最大化するように売りを行うプラットフォーム。DSP側にはブラウザ情報やサイトのデータなどを送信し、複数のDSPのオークションを行うことで収益率を最大化します(イールドマネジメント)。

リターゲティング/リマーケティング広告

バナー広告/ディスプレイ広告は、概して顧客から無視されている広告手法であると言えます。しかしながら、手法を工夫することで、バナー広告でも効果を出すことは可能です。
GDN、YDN、Criteoなどでは、リターゲティング/リマーケティングと呼ばれる手法を使うことができます。これは、一度訪れたユーザーをCookieなどを使って記録し、別サイトでも同じユーザーに広告を表示することができる機能です。
広告の認知率はフリークエンシー(接触回数)が増えるたびに増加していきます。リマーケティングは、顧客の注意力に限界があることを前提にしています。
comScoreの分析によると、リターゲティングは、他のディスプレイ広告に比べて、ブランドキーワードの検索数の上昇に大きな効果があることがわかっています。
ブランドキーワード検索率
配信可能なリーチ数
必要なコスト
リターゲティング
1,046%
30
373
オーディエンスターゲティング(過去の閲覧履歴から配信する広告)
514%
30
329
純広告
300%
21
1,471
コンテンツターゲティング(関連するページに配信される広告)
130%
73
1,473
ノンターゲティング(全てのページを対象にコンバージョンに最適化された広告)
126%
100
100
クリック単価による自動化
100%
57
1

脱Cookieによる変化

しかし、こういった広告手法に関して、近年、大きな変化がありました。GDPR(EU 一般データ保護規則)の発行など、個人情報保護に対する意識の高まりと国などからの圧力が高まっていることです。
iPhone を発売する Apple は、2019年にITP2.3を発表。これにより、iOSではCookieの取得に大きな制限が課されることとなり、従来の広告手法から転換を図る必要が出てきました。
【最新】3分で分かるITP2.3|広告マーケ担当者が知っておきたいことまとめ | Infinity-Agent Lab
Infinity-Agent Lab
遅れること1年半、AndroidとChrome、モバイルとデスクトップ双方においてWebに大きな影響力を持つGoogleも、Chromeブラウザにおいて第三者Cookieの利用を排除することを決めました。
グーグルはクッキーに代わるツールも使用しない…デジタル広告の世界はどう変わるのか
BIJapan
Cookieという技術は、訪問したWebサイトなどのデータをかなり細かく取得して、それを利用できるという、広告テクノロジーにとっては必須の手法でした。リマーケティングなどの技術やDSP・SSPの技術も、大きくこれに依存しています。
今後、Google や Apple 、Facebook など、Cookieに依存しないプラットフォームがデータを生かして広告最適化の手法を開発することになるのか、まだまだ目が離せません。
最終更新 2mo ago